S.A.クリプキ、『ウィトゲンシュタインのパラドクス』、産業図書、1983.

およそ4年ぶりの再読。とりあえず以前はかなり誤読していたことが分かった。この本に書いてあることはだいたい分かるのだが、これがその他の事柄とどう関連してくるのかを考えると、全然分からない。例えば非標準モデルの存在とか、ダメットの検証主義的意味論とか、canonical proofの問題とかとどう関連するのだろうか。痛みや色に関するその後の議論を見ても、痛みと算術の例を同一に扱うのは問題がありそうだし。68+57=125というたった一つの文を取り上げて議論をすることにもずっと違和感が残る。結局、ある文集合に同型ではない複数のモデルが与えることができるということが言いたいんだろうか。クリプキは論理学に精通しているわりには、この本では意図的にそういうことに触れないでいるし。規則のパラドクスの問題はここで論じられているのとは異なる問題であるような気がしてならない。ずっともやもやが残る。