Definite description

今日は確定記述についての講演。確定記述は指示的であるか。もしそうだとしたら、どんな確定記述が指示的なのか。ラッセルはこの問題を追って、結局は論理的固有名だけが指示表現であって、普通の確定記述はみんな偽装された指示表現だという結論に達した。ラッセルの結論は極端だが、どう考えるにしてもかなりの問題がある。特に"all F", "most F", "no F", "the F"といった表現は形が似ているので、同様の扱いができたほうがよい、という話がある。通常の取り扱い方では"most F"の量化表現をどうするかとか、"no F"の指示対象をどうするかとか、"the F"が量化表現と同等に扱えるのかとか問題が多い。

なのでこうしよう。Martin Davisが提示したように、meanを原始述語に取って、以下のようにする。

"Mars" means Mars.
If f means F, then "all f" means all F.
If f means F, then "no f" means no F.
If f means F, then "the f" means the F.

ほら、統一的取り扱いができた。ここで"Mars" means Mars.といった文はトリビアルなものではない。学習可能だし忘れることもあるlearnable and forgettable*1。結論として、ある確定記述が指示的であるかは本質的な問題ではない。それはどのような言語資源があるかによる。

質問してみる。確定記述が指示的であることは本質的ではない、それは言語資源によって決まるというが、結局、いかなる確定記述が指示的であるかに説明が与えられていない。確定記述が指示的に働くかは結局、我々のメタ言語の原初的理解に求められているのか。
応答。まさにその通り。しかし何とはなしに基準はある。例えば存在汎化ができるなら、それは指示的に働いている。

うーむ。meanを原初的であるとしてS means pという仕方で説明することには確かに意味があるとは思うが、まさに存在汎化可能であるとかそういった基準が何であるかを考えることが本当に問題なんじゃないんだろうか。ラッセルを始め、確定記述を問題視した人はまさにそれが知りたかったんじゃないんだろうか。メタ言語における我々の確定記述の理解を。それをメタ言語の原初的理解に訴えるのは、私にはどうも違和感が残る。そもそもメタ言語と対象言語の区別なんて。メタ言語なんて、メタ言語なんて、メタ言語なんて・゜・(ノд`)・゜・

それにしても聞きやすいイギリス英語だった。ほとんどの部分を聞きとることができた。

*1:この表現は印象に残った。いつもだとS means pはSの指示する文とpが属する言語が同じではないときにはトリビアルではないと考えるところだ。