I.カント、『判断力批判 上』、以文社、1994.

趣味で読む哲学としてとても面白かった。訳もけっこう読みやすい。注解は期待した程には役に立たなかった。索引に原語が併記されていないのはちょっと残念。美的判断は一切の関心を欠くこと。客観的ではないが普遍的な(あるいは、規範的な)美的判断。美しいものには規則は存在しない。天才と構想力の情感的理念。自然美と人工美の区別と序列。美的なものに対する自分の感覚と近いからだろうか、分析に共感できる箇所がいくつもあった。一方で、これらのカントの見解を悟性・判断力・理性を始めとする彼の理論的枠組から外して考えることは、やはりけっこう難しい。