S.ブラックバーン、『ビーイング・グッド 倫理学入門』、晃洋書房、2003.

倫理哲学の小さな入門書。第一部でそもそも倫理学など不可能であると言いたくなる理由(相対主義や進化論、決定論など)への反論、第二部でいくつかの倫理学上の概念(欲望、快楽、自由など)について、第三部で倫理学の基礎について。第一部はとてもよい。倫理哲学に関する入口での誤解を解いてくれる。けれども、後は議論が中立的すぎるのか何が言いたいのかよく分からない。深いところに届いていないような感じがしてもどかしい。様々な倫理学的立場について、それらのよって立つ根本的な動機が解明されているとは思えないのだが。確かにそれは私がこういうノーマルな倫理哲学にあまり関心がないせいかもしれない。訳は難いしときおり不明。ブラックバーンがせっかく極めて平易な語り方をしようとしているのにちょっと残念。原著の形態から言ってもハードカバーで出すような本ではないのでは。