永井均、『これがニーチェだ』、講談社、1998.

とても素晴らしい本だ。「倫理学」に関するこの人の著述にはいつも感嘆させられる。*1

何度も繰り返しておくれ、私のこの人生よ。寸分たがわぬこのままで。ーーそれは私の生とこの世界を、外から意味づけているのではない。私の生とこの世界そのものを、それ自体として内側から祝福する祈りなのだ。永遠回帰の祈りだけが、この本来の<神>に対する、唯一可能な、心からの祈りなのである。(p.209)

ある種の哲学は、祈りにたどり着く。この祈りは、何か特別な事態へ向けられた祈りではない。それは、哲学しないことへの祈りである。哲学する人のなかのある人は、哲学しない人を羨望する。それは無垢な子供時代への憧憬なのかもしれない。だがもう一つ、哲学する子供というのもあるのだ。

*1:一方で、<私>の独在論のほうはよく分からないのだが。ただしそれが世界の独在論になったときにはとても自分に近いものを感じた。