ツェルメロ「数学的体系と無限の論理について」(7)

第六段落。これにておしまい。

有基底的な命題が「真であること」あるいは「偽であること」はその基底の真理の割り当てによって決められるのであるから、そのようなあらゆる命題sに対して、命題sが真となるようなあらゆる可能な割り当てpの総体Usが割り振られる。するとその命題はUsのすべての命題*1に及ぶ選言*2と「論理的に同値」(すなわち同時に真かつ偽)*3である。Usがすべての可能な割り当てを含んでいる、すなわちUs=Uならば、sは「絶対的に真」である。Us=Oであれば、sは「絶対的に偽」あるいはこの基底に対して「矛盾している」。二つの命題sとtがあって、UsがUtに含まれるならば、sが真であるならばにtは常に真である、あるいは「tはsから帰結する」。sを「公理系」とすれば、「sから帰結する」命題tの全体は「公理系sに基礎づけられた数学的理論」を構成する。---数学の形式と本質に向けられている様々な「メタ数学的」問いや問題が、ここで展開された基礎からいかにして厳密な学問的探求へたどり着くか。このことを示すには上の例と示唆でいまは十分であろう。

*1:ややルーズな言葉の使いかた。Usは真理値割り当ての集合のはず。それは基本関係とその真理値からなる行列であって、命題の集合ではない。ここで命題として考えられているのは、真である基本関係の連言か。

*2:sの選言標準形のようなものになるだろう。

*3:gleichzeitig wahr und falsch。`wahr oder falsch'ではないかと思うのだが。実際、この論文とほぼ同じ内容の書いてある別論文ではそうなっている。cf. E.Zermelo, `Über Stufen der Quantifikation und die Logik des Unendlichen', 1932, S. 88.