D.クーセック・G.レオンハルト、『デジタル音楽の行方』、翔泳社、2005.

インターネットを初めとするデジタル技術が音楽にもたらす将来的影響について、様々な観点から未来予測を描いた本。各所で評判が高いみたいだが、私にはあまり面白くなかった。なぜだろう。
どうも夢物語を描いているだけに見えるだろうか。そう言うには具体例や、局所的な成功例が多く含まれていて、そんなに夢物語であるわけではない。自分があまり本書で提示されるような音楽の未来像に共感しないからかもしれない。本書では欲しい曲が一曲あったとして、レーベルはその一曲以外に10曲くらいを「抱きあわせした」CDという形で売り付けており、iTMSなどで一曲づつ買えるようになるのはその呪縛からの解放である、ように書いている。自分にはどうもそういう感覚は無く、だから一曲づつ買うことにも興味は無い。
それから、これは音楽好きの未来かもしれないが、社会的に音楽がそれほど必要とされているのだろうか。単に音楽が流通しにくくなっているからそうなりつつあるだけなのだろうか。どうもそれ以外の要因で、音楽の重要性は下がってきている気がする。
最後に。音楽流通の現状において、レーベルのやっていることが単なる抵抗にすぎないし、本来的な流通を妨げているという意見はよく聞く。本書もそれが貫かれているし、確かにレーベルのやってることはおかしい。しかしこのことは明らかすぎるように思われる。ある一つの意見があまりにも明らかであると思われるなら、おそらくまさにそのことによって、その意見は何かを見落としている。そういう感覚は、この本には無い。