「ツェルメロがフッサールに口頭で伝えたことのメモ」(3)

これらは全体として集合M0(すなわち、それ自身を要素として含まないMの部分集合すべての集合)を形成する。そこでM0について次の二つのことを証明しよう。1)M0はそれ自身を要素として含まない、2)M0はそれ自身を要素として含む。

1)について。M0はMの部分集合としてそれ自身Mの要素であるが、M0の要素ではない。なぜならそうでないとすると、M0はMのある部分集合であって自分自身を要素として含まないもの(つまりM0そのもの)を要素として含むことになり、M0の概念(Begriff)に反することになる。

2)について。したがって、M0それ自身は、それ自身を要素として含むのではないMのある部分集合である。したがって、M0はM0の要素でなければならない。

M【のような】定義の集合はもちろん、すべての集合の集合である。この集合は、集合はそれ自身を要素として含みうるということの例としても使える。つまり、すべての集合の集合はまた集合なのである。

これで終わり。ただし最後の段落について注記が必要。上ではuniversal class(ここではM)は集合ではないと証明されながら、最後の段落でまた集合である(universe setが存在する)と言われている。実は、この最後の段落以外はインクでのメモであり、最後の段落だけ鉛筆書きになっている。つまり、最後の段落は後でフッサールが加筆したと考えられる。Rang&Thomasはこの部分はツェルメロからの伝達ではなく、フッサールが自分で考えて書いたものだろうとしている。つまり、フッサールが混乱していると。その割にはそれより前の証明はきちんと再現されているのだが、とも注記しつつ。