フッサールの数学の哲学についてのメモ書き (6)

さて、マリオンはこの論文で、フッサールから影響を受けたとされるワイルとゲーデルがどの程度フッサールを受け継いでいるのかを検討する。
結論は、ワイルは忠実な継承者とは言えず、他方ゲーデルはそうであると言えるというものになっている。ワイルが継承者でないとする論点は、主たるところとしてはワイルが自然数列が直接に直観可能だと考えている点だろう。フッサールにとっては数学的対象の直観は直接には成立せず、別の作用に基づけられてのみ可能となる(少なくともワイルが依拠する『論理学研究』においては)。加えて、ワイルは改訂主義者であることもフッサールからは離反する。フッサール構成主義的と言えるモティーフを持ちながら、決して改訂主義者ではない。マリオンによると、これらはポアンカレの影響のようだ。*1

一方でゲーデルは改訂主義ではなく、通常の経験的直観と数学的直観(範疇的直観)の並行的類似性を認める点においてフッサールに忠実であるとされる。また、ゲーデルのいう「数学の汲み尽くせなさ」は、対象は超越的であって十全な直観には与えられないというフッサールの見解に忠実だとされる。したがってゲーデルフッサールの継承者であると。

だが、それには疑義がある。それは単なる解釈の違い以外のものでもある。

*1:それ以外の相違点としては、数学を介さない空間の直観が不可能であるとワイルが考えること、および直観された連続体と数学的連続体の間に断絶を認めていること、が挙げられている。