上山安敏、『神話と科学 ヨーロッパ知識社会 世紀末〜20世紀』、岩波書店、2001.

原著は1984年。主にウェーバーを中心に、19世紀末から1920年頃までのドイツ社会(ワイマール文化の前)を描く。対立軸の取り方がうまく、読んでいて非常に面白い。大学組織の中で細分化され、産業化・官僚化する学問知の姿を代表するウェーバーフロイトトーマス・マン。それに対する在野のディレッタント、詩人たちゲオルゲ、シュペングラー、ユングなど。後者の源泉となったバハオーフェン。もちろんそんなに単純な図式にはならず、ウェーバーのグロース周辺への微妙な態度、トーマス・マンフロイトとの距離の取り方など、複雑なところを鮮やかに書いている。また、出版人ディーデリヒスや理想主義者たちのコロニーであるアスコナなど、視点の取り方にも惹かれる。この時代の人文文化がどうなっていたか鮮やかに描かれる。この時代のドイツ思想に興味を持つ人は、この本をぜひ一度読んでみるべきだろう。