佐藤良明、『J-POP進化論』、平凡社、1999.

明治以降の日本の流行歌が、西洋やアメリカの黒人音楽などの影響を受けつつ、どのように変化してきたかを扱った本。知らなかった概念がいろいろと出てきて、分析は楽しい。しかし知らない曲の話をされるとやはりかなり分からない。譜面が載っていてもいまいちピンとこない。著者が詳しいのは60/70年代あたりらしく、そのあたりは共通了解のように書かれているのだが、全然分からない。やはり本で音楽の話をするのはけっこう限界があるんだろう。おまけに、基本的に相対音階で書かれているので、絶対音感の私には訳が分からなくなる。しかし著者が悪いわけではない。もちろん出版された年がそうなので、分析は宇多田ヒカルの"Automatic"で終わっている。
どっかでやっているんだろうけど、今の音楽に対する分析も聞きたいところ。個人的にはOrange Rangeの分析が見たい。「花」を聴いたときにはそのあまりの伝統性・保守性に驚いたものだった(歌詞も含めて)。あれは琉球音階が基調になっているが、その他の曲ではJ-POPの伝統的な音階が使われていると感じる。盗作がなんじゃないかとしつこく言われているのも、いかに彼らが伝統的なJ-POPであるかを示しているだろう。彼らにはサザンの複雑なシンコペーションも、ハングルのパッチムのようなミスチルの子音の縮約もない。そういう音楽が、90年代にはJ-POPにしてJ-POPではないものと考えられてきた沖縄から出てきているというのも、示唆するところが大きいんじゃないかと思っているのだが。