Roger Schmit, Husserls Philosophie der Mathematik: Platonistische und konstruktivistische Momente in Husserls Mathematikbegriff, Bouvier Verlag, 1981.

ちょっと前までこの分野の標準的文献だったもの。いまさら通読。確かによく書けていると思う。この分野で久々にある一定のレベル以上のものを読んだ気がする。『算術の哲学』の問題点がどこにあるのかについての指摘は適切だし。その直後の転回についてもちゃんと押さえている。1890年前後の草稿があまり出てなかった時期としてはなかなか。『論理学研究』の強い概念実在論を弱めて読む読み方、確定性概念の整理、超越論的現象学からは一貫して距離を置くこと、など適切に思えた。ラッセル・パラドクスについての草稿(AI35)を扱っているのも面白いところ。

だがフッサール自身についてはよくできているとはいえ(それにしても多様体概念はあまり整理できていないのではないか)、数学の哲学一般としてはかなり怪しいところ多数。クロネッカー自身については何も語られないのによく出てくる。カントールが無制限な包括原理を採用していたというには疑義がある。構成主義がすべて認識論的関心から発すると考えるのは不適切。フッサールは基本的に構成主義的考えを持っていると考えようとするが、構成の概念が曖昧すぎる。フッサールラッセル・パラドクスに対する対処として、反復的集合観のような発想を見せるが、それって構成主義的と呼べるのか。など。